事務所の組織化を考えるようになる。

私には、地域の方々のさまざまな法的な課題や紛争の解決をして、住みよい地域を作っていけるような「地域のインフラ」となる法律事務所を作っていきたいという思いがあります。しかし、弁護士一人でできることには限界があり、そうしたことをやっていくためには、弁護士や事務スタッフの定着が必要であるし、一定のビジョンや目標に向かって一緒に行動する必要が出てきます。

そのため事務所の人材が揃ってくるのに合わせて、今後、事務所を個人事務所から脱却し、組織化していく必要があると考えました。

法律事務所は究極的には人が資産といえるビジネスモデルです。そこに、様々な専門や経験をもつ弁護士や事務スタッフが複数人いることによって、初めて提供できる価値があります。私は個人事務所時代に、弁護士が一人で出来ることの限界をほとほと感じていましたので、事務所に複数の弁護士がいるということの価値は非常に大きいです。

私は、事務所を作っていくうえで、単なる個人事業者の集まりのような、弁護士がそれぞれバラバラに勝手なことをやる事務所というものを作りたくはありませんでした。

それまでのうちの事務所は、事務所=私という事務所と個人が切り離されていない個人事務所でしたが、そういった事務所に多くの弁護士が定着するということは考えられませんでした。

当時の事務所の延長線上には、自分が理想とする地域のインフラとなれるような事務所は絶対にないと思い、事務所を組織化するためのマネジメントに関する施策を多く採っていくようにしました。

 事務所名の変更・法人化

マネジメントの施策としてまずやっていったのは、事務所名も変えていくこと、それに合わせて法人化も行うことでした。

それまでの「小前田法律事務所」という事務所名だと、どうしても所長の小前田という弁護士が主役の事務所となってしまいます。私は、私ではなく所属している弁護士が主役となる事務所を作っていきたいと考えたので、事務所名からは、私の名前は外すことにし、ランサーズで名前を公募しました。

ランサーズでは、たくさんの名前の候補をいただき、その中から私以外の弁護士や事務スタッフにも投票してもらい、地域のインフラとなる法律事務所を作っていきたいという私の思いを一番表している事務所名である「弁護士法人ふくい総合法律事務所」としました。

ロゴマークは、私が所属している福井YEGのメンバーで一番センスがいいと思っているデザイナーに作ってもらいました。

ロゴマークの意味は、緑の部分が福井県、青の部分が海(日本海)、赤の丸の部分が当事務所を表しています。ふくいの中心となって、地域のインフラになる法律事務所を作っていくという決意を表明したデザインとなっています。あと、事務所の英語名である「FUKUI  LAW  OFFICE」の頭文字であるFとLとOがロゴマークにも描かれたデザインになっています。

事務所名の変更に合わせて、事務所を法人化し、平成28年4月に当事務所は、「弁護士法人ふくい総合法律事務」となり組織型事務所を目指していくことになりました。

 朝礼の実施・クレドの作成

マネジメントについていろいろ調べていたときに、知人に勧められて読んだのが、神田昌典さんの「成功者の告白」という本で、その本の影響で朝礼を実施することにしました。

また、その本の中で紹介されていた「グッド&ニュー」も朝礼と一緒に実施することとし、事務所の一体感を作ろうとしました。

グッド&ニューを詳しく述べているサイト

https://note.com/smartcamp_design/n/n6b51611f7173

次に動き出したことは、本に書いてあったクレドの作成でした。

成功している組織についていろいろ調べていると、そういった組織は経営理念やクレドといった組織としての理念や目標を必ず定めていることが分かりました。そういったものを、うちの事務所でも作成したいと思い、何度かメンバーとも話合いをしながら、下記のようなクレドを作り上げました。

このクレドについて、自分の考え方や、実践していることなどを、朝礼でメンバーに話をしてもらい、クレドの内容がメンバーに定着するようにしています。

 各種会議の実施、会計の公開

個人事務所時代は、ほとんど会議を行っていませんでしたが、

  • ・弁護士会議
  • ・事務局会議
  • ・事件ミーティング

等の会議を実施するようになり、会議による意思決定や意見交換、情報の共有を行うようになりました。

あとは、代表である私と事務所のメンバー全員と月1回の個別面談を実施しています。現状に不満がないか、仕事で困っている点はないか、本人の希望している仕事はあるか等を確認し、それを事務所経営に反映させるようにしています。

また、事務所の会計状況についても事務所のメンバー全体に公開するようにしました。あまりこれはやっている事務所は少ないかとも思います。

会計状況の公開は、組織として事務所を経営していくために、経費を無駄遣いしていないかをチェックしてもらい、メンバーに対して公平に報酬を分配していこうということを示すことが必要と考え、実施しました。

この記事にはすべては書ききれませんが、この他にもさまざまなマネジメントの施策を実施してきました。

 弁護士の独立や定着について

私が即独した経験から思うに、事務所で3年くらい勤務すればいろんな事件の処理については、最初から最後まである程度の数の事件を経験できますし、独立して個人事務所を経営するにあたって、とにかく経費をかけないようにさえすれば、それほど営業を頑張らなくても、自分や家族が生活していくのに困らないくらいのお金は余裕で稼げると思いますので、弁護士が独立してやっていくこと自体はそれほど難しくないと思っています。

また、自分も独立して事務所をやっている以上、勤務弁護士に対して「独立するな」とはとても言えませんし、言うつもりはありません。

私の人生におけるベースの考え方は、「自分の人生は、自分で決めるべき」ということです。自分の人生や生き方について、まわりの声に影響される必要はないと考えています。

勤務弁護士から「独立したい」と言われれば、経営者弁護士は「頑張ってください」と応援すべきだというのが、私の考えです。

では、弁護士の定着をどうやって図るかということになりますが、これは、イソップ童話の「北風と太陽」の話でいうと、北風ではなく、太陽の施策をとっていく必要があると思っています。

「北風」の施策というと、少々古いブラック事務所の例で極端ですが、過去に記事になったものだとこんなものがあります。

脱線しましたが、弁護士の定着を図るための太陽施策としては、独立するよりも、事務所にいたほうメリットが大きい(自由である、自分のやりたい仕事ができる、稼げる、居心地がよい、人間関係が良い等)という環境を作っていくことが大事だと思います。

もちろん、どんな施策をとったとしても独立する弁護士は独立していくでしょう。そこを事務所が、弁護士の独立を押さえつけようとするのは、無意味で有害であると私は思います。

勤務弁護士が独立を希望したときには、私が先輩弁護士にしてもらったように応援し手助けしていきたいと思っています。

 事務所経営では売上よりも利益が大事

事務所を組織化して気がついたことは、「法律事務所経営では売上よりも利益が大事」ということです。

法律事務所の経営においては、基本的には何かを仕入れて、売るということはないので「売上=粗利」が成り立ちます。

そのため、安易に売上をあげることだけを考え、売上さえ上がっていれば経費について気にしないということになってしまうことがあります。少なくとも、個人事務所時代の私はそうでした。

ここで、気をつけないといけないのは「売上-経費=利益」で成り立っているということです。

この利益を残すということが事務所経営においては重要になります。

利益が残らなければ事務所を維持することもできず、地域の人に安定したリーガルサービスを提供することができなくなります。また利益を溜めて内部留保しておかないと、将来、今回のコロナのような危機が発生したときに対処できなくなってしまいます。そしてなにより、働いているメンバーが事務所経営に不安を感じると思います。

「売上-経費=利益」とすると、利益を上げる方法は

  1. ①売上を上げる
  2. ②経費を下げる

の2つがあるということになり、経営者はこの2つの施策を実施していかないといけないということになります。特に、うちの事務所は、私が個人事業主として始めた事務所ということもあり、昔は経費に対する考え方が甘く「②経費を下げる」ということはあまり考えず、経費を使った方が節税になるということで経費を使いまくっていました。

しかし、事務所を法人化した後、自分の役員報酬も経費になり利益を出すのが難しくなったというところから、意識が変わりました。そのため、ここ2・3年くらいは、経費を削減するということに意識を向けています。具体的には、固定費などのさまざまな経費の見直しを定期的にしています。ただし、所属弁護士やスタッフの給料や福利厚生は下げないようにしています(むしろ増やす方向で考えています。)

経費を下げていけば、売上が伸びていなくても、利益が残ります。利益を残し内部留保となっていれば、たとえ事務所に危機が訪れても、事業を継続することができます。

 個人法務分野に注力

現状として、うちの事務所で取り扱いが多いのは、交通事故や離婚・男女トラブル、債務整理・破産、相続といった個人の依頼者向けの仕事(個人法務分野)です。

私は、中小企業における経営戦略に関しては、ランチェスター経営(戦略)が正しいと考えており、そのため取り扱う業務分野や顧客は出来る限り絞っていくべきだと思います。

※ランチェスター経営(戦略)について

うちの事務所の規模であれば、まずは個人法務に注力し、深堀りしていくことが大事ですので、まずは事務所としては、個人法務分野で福井のトップクラスの事務所になっていきたいと考えています。

一時期、法人の顧問を狙って、企業向けにセミナーを開催したこともしましたが、こちらはほとんど顧問のご依頼には繋がらなかったので、今は一旦休んでいます。また、福井における中小企業法務については開拓をしていきたいと考えていますが、まずは個人法務分野でしっかり結果を出してからと考えています。

 今年(令和2年)の事務所の状況

令和2年1月から、3人目の勤務弁護士として、土屋先生に加入していただきました。これにより、うちの事務所は弁護士4人、事務スタッフ4人の事務所となりました。福井ではそれなりに大きな規模の事務所になりました。

土屋先生はじっくり依頼者の話を聞いていただけるため、依頼者からの信頼も厚いです。依頼者のために何が出来るかといとをすごく熱心に考えて行動している姿が印象的で、そういった姿勢が事務所を活性化する起爆剤となっています。

今年は、コロナ禍の影響で、一時的に事務所に対する新たな問い合わせが減るということもありましたが、現状として、事務所経営に大きな影響はありません。今後、個人法務について深堀りしていくために、債務整理・破産のHPも現在作成しています。

 まとめ

これまで、第1章では事務所開設までのあゆみ、第2章として私が個人事務所でやっていた時代(第1創業期)を書かせていただきました。

今回の記事では、第2創業として組織型事務所を目指して事務所経営をスタートさせ、そこから約6年経過した現在までの話を記事にさせていただきました。

10年間を振り返って書き出すと思ったよりも文章が書けてしまい、結果的にだいぶ長文の文章になってしまいました。ここまで読んでいただいた方は、こんなに長い文章を読んでいただきありがとうございました。

読んでいただいた方にはわかると思いますが、当事務所は組織型事務所としてはまだまだ未熟な点も多く、今後はさらなる発展をさせていきたいと考えております。そのために一緒に事務所を作っていただけるメンバーとして、弁護士及び事務スタッフの採用を継続的に行っております。

採用についてご興味のある方は、是非事務所までお問い合わください。